点字通信 第18号  群馬県立盲学校 点字係 令和7年9月19日(金) 発行 ~点字が生まれて200年 ルイ・ブライユが点字を生み出すまで~  今年は、世界で初めて点字が誕生して200年という記念すべき年です。そこで今回の点字通信では、点字が誕生するまでについて、紹介させていただくこととしました。  1825年、フランスのパリ。当時王立盲学校に通う16歳の少年、ルイ・ブライユによって点字は生み出されました。  彼は、3歳の時、馬具職人であった父の部屋で目を怪我してしまいます。そして、5歳となった1814年、両目の視力を失ってしまいます。それまで、好奇心にあふれ、活発に飛び回っていたルイでしたが、沈みがちで部屋にこもることが多くなっていったそうです。  そんなルイに対して、父親が木に釘を打ち付けて文字を表現したり、家の敷地内に砂利をしき、足音を頼りに一人で移動できるようにしたり、母親や二人のお姉さんが本を読んで聞かせてあげたりしたそうです。そのような家族の優しさに育まれる中で、彼も活発さを取り戻していきます。  7歳となったルイは、地域の小学校に通い始めます。器用で集中力が高く、記憶力も抜群であったルイの成績は、トップクラスだったそうです。しかし、ルイは小学1年生を2度にわたって経験することになります。その理由は、文字の読み書きができなかったからです。  1819年、10歳となったルイは、実家から40キロ離れたパリの王立盲学校に入学します。そこでは、浮き出し文字による授業が展開されていました。誰かに読んでもらうのではなく、自分で読める文字を手に入れたことで、ルイは大いに喜びます。しかし、浮き出した文字を触って読むのには多くの時間を必要とします。また、自分で書くことはできません。  1820年。シャルル・バルビエという元軍人が盲学校を訪ねてきます。彼は、夜でも敵に気づかれることがなく指示を伝えられるように、ソノグラフィー(夜の文字)という、縦6点、横2列からなる暗号を作りました。実際には軍隊で採用されることはありませんでしたが、この12点の組み合わせを視覚障がい教育で使えると考え、盲学校に紹介しようと考えました。  ソノグラフィーに初めて触れたルイは大いに感激します。友人と手紙の交換ができることが、大きな喜びだったそうです。  しかし、彼は喜びと同時に課題も感じていました。指を上下させなければならず、これでは読み速度をあげることができません。また、点の数が多いため、スムーズに書くこともできません。  そこで彼は、12歳となった1821年から、改良を始めることとしました。寄宿舎で周囲が寝静まった後、彼は黙々と検討を重ねていったようです。  そして、1825年。16歳となったルイは、ついに、世界で初めてとなる点字の発明にこぎつけました。  しかし、彼が考え出した文字が正式にフランス政府から認められるまでには、29年という、とても長い時間がかかりました。この間、パリの王立盲学校では、点字の使用を禁止されてしまった時期もあるそうです。新しいものが作られ、多くの人から受け入れられるということが、いかに大変であるかということを、この事実は物語っているのかもしれません。  点字が生まれて200年。もし、ルイ・ブライユがこの世に誕生していなければ、私たち視覚障がい者は今もなお文字を手に入れることなく生活していたのかもしれません。そう思うと、彼への感謝の気持ちを改めて感じている今日この頃です。 参考図書 ルイ・ブライユ 点字を発明した19世紀のフランス人 小学館版 学習まんが人物館 著者 新井隆広 大内進