点字通信(since 2016)

点字・情報通信 ホームページ版 第4号

 

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2017年10月10日(火) 
発行:点字・情報研究係

点字指導者講習会に参加して

新樂和則

8月28日(月)、29日(火)に大阪市の山西記念福祉会館で行われた点字指導員講習会に参加してきました。これは、点字指導員認定講習会と交互に隔年で実施されているもので、今回の講習会には100名を超える参加者がありました。
  今号の点字・情報通信では、そこで得られた内容についてご紹介させていただきたいと思います。

 1.点字表記法・点訳の手引きの改訂について


 2018年度中に新しい点字表記法が発行になるそうです。そして、それに伴い、点訳の手引きの改訂も行われるということでした。今回の講習会では、その主な内容に関する説明が行われました。今後の予定として、2017年11月に点字表記法改訂版の原案が日本点字委員会のHP等で公開され、意見の募集が行われるそうです。日頃の指導を通じて感じている事柄を点字表記に反映させる良い機会ですので、積極的にご意見を届けていただけたらと思います。
  講義を聴いている中で、改訂の内容より、そもそもなぜ改訂が必要なのかというお話が非常に印象に残りました。なぜなら、点字を常用している私自身が、「分かち書きなんて、どっちだって良いようなことが多すぎる」、「どちらでも良いような内容を議論している日本点字委員会とは、非常にマニアックな集団だ」と思っていたからです。講義で聴かせていただいた改訂の理由とは、「大学入試等で、大学側から点字ではどのように書くのですか?」と聞かれることが多く、曖昧にしておくわけにはいかない。」、「時代とともに新たな専門用語などが誕生しており、こうした現状に対応していくには、ある一定期間ごとに改訂をしていかざるをえない。」ということでした。今回の改訂については、2012年から検討がスタートしており、6年にも及ぶ議論の末に発行されるそうです。これほどの長い経過を経て発行されるものですから、現場で指導に携わる私達も、新しい表記法をしっかりとマスターし、大切にしていきたいですね。

 2.BESE(ベセ)の紹介


  これまで点図の作成はEDELというソフトによって行われてきました。しかし、このデータを点字編集システムで取り込むことはできず、本文と図を別々のファイルで保存せざるをえませんでした。今回新しく作成されたBESE(ベセ)というソフトは、EDELで作成した点図データをBES形式に変換することができるというものです。つまり、点字編集システムで作成した文章の中に、点図を入れることができるようになりました。これまで以上に点字の教材作成の幅が広がったように思われます。このソフト自体はフリーですので、HP等からダウンロードしていただき、積極的にご活用いただけたらと思います。

 3.ボランティア養成プログラムについて


 神奈川県ライトセンターで行われているボランティア養成の流れについて説明が行われました。同センターには歩行訓練士などの専門的な資格を有する常勤の職員が4名もおり、点訳ボランティアだけでなく、朗読ボランティア、ヘルパーなどの養成も充実したプログラムの下に行われていました。また、中途視覚障害者に対する相談、支援業務なども行き届いており、そこで学んだ人が翌年盲学校に入学するという流れができあがっていました。地域格差の進む現状を感じるとともに、本県における中途失明者への支援のあり方について議論していくことの必要性を感じさせられました。

 4.その他


  休憩や昼食の時に全国各地のボランティアの方々と交流を深めることができました。どのグループの方も利用者の減少という問題に直面しており、点字文化消滅の危機という問題が私が想定していたより遙かに大きな課題となっていることを感じさせられました。生徒に直接点字を指導する立場にある私達自身が、文化の継承者であるという強い自覚と責任を持ち、指導に当たることが重要であると思います。
  次回の講習会は2年後です。来年度は指導員認定講習会です。ぜひ、一人でも多くの方に挑戦していただき、2年後の講習会に本校からどなたかに参加していただき、全国の点訳ボランティアの方との繋がりを持っていただけたらと思います。