2021年4月の記事一覧
点字通信 第8号
点字通信第8号(PDF形式)
点字通信第8号(テキスト形式)
盲学校の先生へお伝えしたいこと
黒澤 康子
はじめに
22年前、私は視覚障害教育のイロハも知らず、本校にやってまいりました。 とても不安でした。なぜなら、盲学校を選んで入学してくる児童生徒は、視覚に障害のある人達であり、他校にはない専門性を求めてやってくるからです。それは、障害が単一であるか重複であるかに関係ありません。
私は、見えにくい・見えない世界を全く知らずに大人になりましたし、身近に接した経験もありませんでした。教員になってから17年経っていましたが、専門の教育を受けたことはありませんでした。いわば全くの素人です。そんな私が、本校へやってくる児童生徒の期待に応えられるのだろうか?それがとても不安でした。でも、それは私の事情です。児童生徒には何の関係もありません。ベテランであろうと素人であろうと、児童生徒の前に立てば、私は一人の「先生」です。期待に応えられる教員になりたいと思いました。専門性を高めたいと思いました。
振り返れば、この22年間に、私は多くのことを学びました。教えてくださったのは、周りの先生方であり、書籍であり、そして何よりも児童生徒でした。校内の先生方にはとてもお世話になりました。けれども、それだけではありません。出掛けた研修先で知り合いになれた全国の盲学校の先生、視覚障害関連の仕事に携わる方からも多くのことを学びました。そして、ロールモデルとしての理療科の先生からも、たくさんの示唆をいただきました。書籍からは、一人では考えたり実践したりすることのできない知見を得ました。それらは、日々の教育活動に生かされたものと信じます。
みなさんは大学の各専門分野で学び、またこれまでの勤務校で実績を積み、本校に着任されました。その経験は、児童生徒に接する上で大きな力となっています。そのうえに、視覚障害の専門性が加われば、さらに大きな成果が得られるのではないでしょうか?
22年前、私はとても不安でした。
先生には不安はないですか?
退職の日を迎えるにあたり、長年お世話になった本校へのお礼に、私を支えてくれたことがらをまとめて、お伝えしたいと思います。専門性を身に付ける道筋のささやかな例として、「書籍」「研修や情報入手」「点字の指導」の三つの視点で書きます。この中の一つでもお役に立てば幸いです。
1 お勧めしたい書籍
私たちの仕事で一番大切なのは、児童生徒の様子を丁寧に見ることではないでしょうか?ひとくちに視覚障害といっても、一人一人、現状も秘めた能力も異なります。希望する進路も異なるでしょう。児童生徒の希望する進路を踏まえ、現状を把握し、そこから有効な手だてを見いだし、実践しなければなりません。
そして、書籍から基礎知識を得ましょう。実態把握にしても、手だてを考えるにしても、視覚障害について知っていなければならないからです。
特にお勧めしたいのは「視覚障害教育に携わる方のために」の一冊です。盲学校に初めて勤務する方の必読書と感じています。視覚に障害をもつ子どもの特性や心理を踏まえ、乳幼児期から学校教育、社会的自立に至るまで、発達段階に合わせた養育・指導上の配慮を解説しています。盲学校教育を概観することができます。
加えて、国語科の先生は、「視覚障害児のための言語の理解と表現の指導」、理科の先生は「観察と実験の指導」、空間概念や歩行を指導される先生は「歩行指導の手引」などに、是非目を通してください。全て文部省が過去に出した本で、入手は難しいかもしれませんが、自立活動用具室や教材教具室等に保管されていますので、大切に読んでください。
さらに、障害当事者である小林一弘、三宮麻由子、広瀬浩二郎各氏の著作もお勧めです。視覚障害そのものへの理解が深まることでしょう。
2 お勧めしたい研修・情報入手
盲学校の少人数化・重複化は急激に進んでいます。他の職員と課題を共有することが難しくなっています。授業・教材研究を深めることが難しくなっています。一方で、視覚障害教育関連の研究や機器は年々新しくなり、児童生徒のために情報を日々更新していく必要があります。
そうした課題を解決するために、研修会に積極的に参加しましょう。全国を対象にして実施される研修会は休日に行われることが多いです。しかし、県内では得られない最新の知見や指導方法のヒントなどを得ることができて、良い刺激が得られます。参加者とのネットワークが広がることによって、困った時に問い合わせできる場所ができます。研修会に参加するメリットは、はかり知れません。
実は、私たちは恵まれています。群馬県は関東北部に位置していますが、東京に日帰りで行けます。宿泊しなければ東京に行けない地方の多くの盲学校と比べて、旅費も安く済みます。この利点を最大限に生かしましょう。
全日盲研や関視研・弱視研についてはご存じかと思います。
他にも、「視覚障害教育研究協議会(附属盲)」「視覚障害教育夏季専門研修(都立盲学校)」「視覚障害教育・心理研究会(筑波大)」「視覚障害教科教育研究会」「全国視覚障害早期教育研究会」等々の充実した内容の研修会があります。
また、特別支援教育総合研修所の短期研修(視覚障害教育コース)や日本ライトハウスの視覚障害生活訓練等指導者養成課程などで3か月~1年にわたり専門知識を得る方法もあります。
研修会に参加後は、実践的なワークショップなど形を工夫して、他の職員に伝達するようにしましょう。そうすれば、チームとしての本校の専門性が高まります。
最新機器の情報入手は、「サイトワールド」に参加することをお勧めします。例年日本点字の日に合わせて11月1日~3日に錦糸町で行われます。会場には視覚障害関連の機器の会社の他、特総研をはじめ研究施設・大学などのブースがあります。研究の動向を尋ねたり機器を触って試したりすることもできます。最新の機器のカタログを持ち帰って校内にも紹介してください。
情報を得られるサイトとして、本校で講演されたことのある元宮城教育大学教授の長尾博先生が作っている「ムツボシ君の点字の部屋」がお勧めです。児童生徒用の点字データを探せますし、修学旅行先を決める際のヒントも得られるでしょう。また、広島中央特別支援学校のサイトなど指導のヒントを得られる場所はたくさんあります。児童生徒たちのため常にアンテナを高くしておきましょう。
今年度は多くの研修会が中止・オンラインになりました。その傾向はしばらく続くかもしれませんが、これら充実した内容の研修会のことを忘れず、引き継いでいただきたいと願っています。また、他にも参加して得られることの多い研修会はたくさんありますので、職員間で積極的に研修会情報を共有できるとよいと思います。
3 点字指導にかかわる方にお勧めしたいこと
点字指導については、文科省の「点字学習指導の手引き」が参考になります。特に、点字の前段階の、両手を上手に使って対象を観察する方法の獲得の指導は重要とされています。
教材としては、点字絵本の「テルミ」は触察の力を養うのに有効です。初期段階の教材としては「点字導入学習プログラム」が使えます。もちろん、児童生徒の興味に合わせて教材を作ることもお勧めです。触察しやすいのは、厚めの用紙(135kg)にパーキンスで1行空きで書いたものです。以下、順に110kgにパーキンスで書いたもの→ESA721の点字プリンタ用紙に18行設定で書いたもの→22行設定でも読めるように、さらに両面設定でも読めるように・・・と進んでいきます。ちなみに点字用紙の厚みは、パーキンス用は110kg、点字盤用は90kgと違いがあります。TP32のプリンタはESAに比べて点字がやや薄めです。なお、中途視覚障害の方向けに自学自習用カセットテープ(最新のものはCD)のついた「点字入門」というテキストもあります。
点字を読む指は、両手読みが理想です。指は縦にこすらずに横に移動させます。他の指は浮かせず、できるだけ点字の行の上にそっておくのが良いとされています。行頭を左指で読み始め、行の半分を過ぎたところで右指にリレーし、右指が読んでいる間に左手は次行頭にたどり着いて滑らかに次行を読み始めるという形がとれるよう、最初から左右の指で同じくらいの速さで読めるように練習します。1ページを2分以内、1分くらいで読めるようになると学習能率も上がります。点字は思考を深める道具として不可欠です。音声だけに頼らずに学習できる児童生徒を育てましょう。
点字盤は右手で書けるように指導します。左利きの子どもも幼いうちなら右手で書けるようになります。左手で読みながら右手だけで定規を押さえ、片手で定規を移動しながら書き進められるように鍛えていきましょう。
文字の指導と並行して言葉の指導は欠かせません。特に幼いころから見えにくさがあった児童生徒は、言葉は知っていても実態はつかめていないということが少なくなく、分かったつもりになっていたり、また年齢が上がるほど、分からないということを口にできなかったりすることがあります。幼い時から目の代わりに情報を集められる手や指を育てること、触ることが好きな人を育てることが必要です。そしてできれば、実物に触る体験を多くさせてあげることが必要です。幼い時に核になる体験(その体験から他を想像できるようなもとになる体験)をできた人とそうでない人では、長い目で見た時の成長に大きな差ができます。「百聞は一見にしかず」ということわざがありますが、視覚障害の人にとっては「百聞は一触にしかず」(Touching is Believing)と言えると思います。昨今教育のデジタル化が進む流れもありますが、実物に触れる機会は、これからも大切にしていきたいものです。
なお、点字に関しては、点字指導員と点字技能師の資格認定があります。点字表記や校正のしかたに加え、技能師の試験では、視覚障害教育・福祉・歴史等も問われ、盲学校での指導にたいへん役立ちます。ぜひ、挑戦していただきたいです。
むすびに
今後、少人数化がいかに進んでも、視覚障害の方が0になることは考えられません。教育の専門性は引き継がれなくてはなりません。
どこに生まれても、どんなに障害が重くても、その人が持てる力を磨き、より望ましいQOLを獲得するために、私たちには視覚障害教育の専門性を駆使して指導に当たる責任があります。児童生徒が点字を間違えたら、その場ですぐに指摘し、正しい書き方を指導できるよう、自らが力をつけていかなくてはなりません。
県内唯一の盲学校の先生には、そのお仕事に誇りをもって進んでいただきたいと、切に思います。自信をもって指導が行えるように、どうぞ児童生徒とともに、学び続けていってください。
点字・情報通信 第7号
点字・情報通信 第7号
点字の日 校内放送より
点字使用者の読書環境
~ブライユの頃と現在を比較して~
新楽 和則
今日11月1日は私たち視覚障害者にとって、とても大切な日です。なぜなら、日本で点字が誕生した日だからです。1890年の11月1日のことでした。
今日はこの時間をお借りして、点字について少しお話をさせていただきたいと思います。
皆さんはサピエ図書館を知っていますか?全国の点字図書館、点訳ボランティアの方々が作成した点字図書、デイジー図書を集めたホームページのことで、現在、点字データ18万タイトル、デイジーデータ7万タイトルを保管しています。このサービスに登録した人は、何冊でも自由にダウンロードすることができ、好きなだけ読書を楽しむことができます。
話は遡ること200年前。世界で初めて点字を作ったルイ・ブライユさんがパリの盲学校に入学した頃の話です。「暗闇の中のきらめき」という本によると、この当時の盲学校の図書室には、なんと3冊しか本がなかったそうです。しかも、普通文字を浮き上がらせて作ったもので、とても読みにくく、大きくて不格好だったため、自由に持ち運ぶことさえできなかったそうです。この本には、ブライユさんが図書室に初めて入った時の期待と失望とが分かりやすく描かれています。そして、この時の思いがその後の点字の発明へと繋がっていることをうかがい知ることができます。
200年が経過した今、私たち視覚障害者の読書環境は大きく変化しました。読みたい本を読みたい時に自由に読むことができる。仮に点訳されていなかったとしても、全国には多くの点訳ボランティアがいて、短期間のうちに本を作成してくれる。まさしく、夢のような世界です。今このような環境があるのは、ブライユさんをはじめ、点字に携わってくれた人たちの日々の努力のおかげです。今日1日ぐらいは、こうした先輩方に感謝の気持ちを持ってすごしていただけるとうれしいです。
第18回六星祭 点字コーナーのおしらせ
第18回六星祭では、北校舎1階の第2プレイルームが点字コーナーとして生まれ変わります。
点字コーナーでは、点字盤やブレイルセンスなどの点字機器をはじめ、点字関係の書籍や点字が付いた日用品の紹介、パソコンを使った点字印刷の実演などを行います。それぞれの展示物については担当のスタッフが説明いたしますので、お気軽にお声がけください。
また、パネル展示として点字の成り立ちなどの説明もあり、1分間に書いた「メ(点字)」の数を競う点字コンテストも開催予定です。参加者には可愛らしい点図が描かれたしおりをプレゼント。点字について知りたい、興味がある、読んでみたい、書いてみたい、点字機器を見てみたい、使ってみたいという方、ぜひこの機会に点字コーナーに足を運んでみてください。皆さんのご来場をお待ちしています。
点字・情報通信 第6号
点字・情報通信 第6号
発行:点字・情報研究係
点字競技の進め方について
平成27年6月から始まった「校内点字練習会」も回を重ね、次回(12月19日(水))で、13回目となります。今年度は、多くの方に参加のチャンスを広げるため、放課後に行っています。問題の録音には、校長先生と教頭先生にご協力いただきました。参加者の半数以上は、日頃は墨字を使用している生徒・事務職員・教員ですが、点字使用の生徒達と机を並べて練習します。いずれの回も、大会議室では熱気溢れる20分間となります。筆記の時、コツコツと点筆の音だけが響く独特の緊張感も、これまた格別です。
さて、今回の点字・情報通信は、これまで点字練習会に参加した方、またこれから参加しようかなとお考えの方に向けて、本校の点字練習会での競技の進め方に触れます。できれば、お手元に点字盤を用意し、実際に書いてみてください。
まず、基本的な知識として、点字盤の1行は32マスです。懐中定規は6行、標準型点字盤では18行書けます。点字を書くときは読むときと逆の、右から左に向かって書きます。
1. 氏名の書き方
学部、学年、氏名は書き上がったときに右寄せになるように、左端のマスから右に向かってマス数を数え、必要なマスからスタートして左に向かって書くことになります。学部、学年、氏名の間はそれぞれ2マス空けます。名前と氏名の間は1マス空けます。(例えば、「コートーブ■■数符1ネン■■アライ■ヒロム」なら、左から21マス目から左に向かって書き始めます。)
競技は、メ書き、五十音書き、転写(写し書き)、聴写(聞き書き)の4つです。以下全ての競技で、「用意」の合図で点筆の先を上に向け、左手は定規に触れます。「始め」で書き始め、「やめ」で終わります。
2.メ書き(30秒間)
1マス目から書き始め、メの字を続けて書きます。
3. 五十音書き(2分間)
- 五十音をアイウエオ ・・・ ラリルレロ ワイウエヲと正しい順序で繰り返し書きます。5字ずつ続けて書き、次を1マスあけます。
- 最初の行に、ナ行まで書き、2行目には、ハ行からワ行まで書きます。
- ヤ行は、「ヤイユエヨ」と書き、ワ行は、「ワイウエヲ」と書きます。
- 「ン」は書きません。「ヲ」が行末に書き終わったら、次の行に「ア・・」と書いていきましょう。1行書けると30点、ワまで書けると60点です。
4. 転写(2分間)
- 用意された問題文をそのまま写し書きします。問題文の1行目にある文 は答案の1行目に、問題文の2行目にある文は答案の2行目に書き写します。途中でミスして1行に1行分が書ききれなくても、2行目に1行目の続きを書くことはしません。
- 問題文の書き出しは2マス空いていますので、転写するときにも3マス目から書き始めます。この空きマスも得点になります。
5. 聴写(2分間)
- 録音された文章を聴き、読み上げられる文章を書きとります。
- 点字練習会では、競技会のように2度読みはせず、読むのは1度きりなので、読み始めたらすぐに書き始めます。
- 書き出しは2マス空けて、3マス目から書き始めます。
- 聞こえたものの全てを書くのが難しくてもあきらめずに、途中で聞こえた単語など書ける部分をどんどん書いていきます。句点(。256の点)の後は2マス空けます。この空きマスも得点になります。
- 朗読が終わってから5秒後の「やめ」の合図で終わります。
- 読み上げの時間は1分55秒(100音節)です。
本校では点字を使用する児童生徒の数が減っており、直接点字の指導に関われない職員も少なくありませんが、末永く、職員と児童生徒たちが共に点字を使うことを楽しみ、点字の力を磨き合える学校でありたいと願っています。
※)本通信は、校内向けに作成されたものを一部修正し、ホームページに掲載しています。
点字・情報通信 第5号
点字・情報通信 第5号
発行:点字・情報研究係
点字図書館ってなぁに?
視覚障害者が知っていると生活がとても豊かになる施設があります。そのうちの1つが点字図書館です。今回は群馬県在住で利用可能な群馬県立点字図書館と日本点字図書館、サピエ図書館を紹介します。
Ⅰ. 群馬県立点字図書館
1. 利用できるサービス
(1)図書等の貸し出し
点字図書、デイジー図書などを郵送で貸し出してくれるサービスです。一般図書だけでなく、雑誌なども点訳・音訳されています。また、群馬県立点字図書館内にあるものだけでなく、全国の点字図書館に所蔵されている本を借りることができます。
貸し出し依頼は電話や手紙、メールですることができます。図書は専用のケースに入った状態で届き、宛名を裏返して投函すれば無料で返却できます。1度に3タイトルまでレンタルでき、2週間借りることができます。延長も可能です。デイジー再生機器の貸し出しも行っているので、手元に何もなくても読書が楽しめます。
(2)プライベート点訳・音訳
個人で手元に置きたい本など、必要な書籍などを点訳・音訳してくれるサービスです。
(3)サピエ図書館への登録の代行
後述のサピエ図書館への利用登録をしてくれます。意外と面倒なので、群馬県立点字図書館への登録とともにお願いするとよいでしょう。
2. 利用にあたって
利用するためには登録が必要です。利用条件は群馬県内に在住していること、視覚障害のために障害者手帳の交付を受けていることの2点です。直接図書館に行く、または電話で登録することができます。
3. 連絡先
〒371ー0843
群馬県前橋市新前橋町13番地の12
群馬県社会福祉総合センター3F
電話:027ー255ー6567
URL: http://www.guntento.org
Ⅱ. 日本点字図書館
1. 利用できるサービス
(1)図書の貸し出し
群馬県立点字図書館と同じく、電話登録によって利用可能です。電話、手紙、FAX、インターネットで貸し出し手続きができます。1日にレンタルできるのは点字3タイトル、デイジー10タイトルまでです。貸出期間は手元に届いてから2週間です。郵送での貸し出し方法、返却方法は群馬県立点字図書館と同じです。
(2)ダウンロードサービス
利用者が用意したメディアにデータを入れて送ってくれるサービスです。後述のサピエ図書館の利用が困難な人のために行われています。データの返却の必要はありません。
(3)レファレンスサービス
読みたい本の検索や視覚障害者関係の団体や施設の紹介をしてくれるサービスです。
(4)専門対面リーディングサービス
専門図書や資料を対面で読み上げてくれるサービスです。日本点字図書館に予約した後、直接図書館に赴けば受けることができます。
(5)中途視覚障害者のための点字教室
曜日と時間が決まっているので、受けたい人はインターネット検索か電話で問い合わせをするとよいでしょう。
(6)視覚障害者のためのIT教室
パソコン教室です。初心者向けと中級者以上向けがあります。個別指導です。
(7)ロービジョン相談会
(8)用具の販売
点字やデイジーに関するアイテムや白杖、拡大読書器、遮光眼鏡、時計、懐中電灯など、視覚障害者にも使いやすい生活グッズなどを販売しています。調理器具やおもちゃも扱っていてなかなか多彩です。一部の商品は見本を貸し出してくれるので、試してから購入することもできます。
購入手続きは直接図書館に行くか、インターネット、電話、FAXで行うことが可能です。日常生活用具等給付事業制度を用いての購入もできます。
(9)点字図書の販売
日常生活用具等給付事業を利用すれば、それなりに安価で購入できます。
2. 利用にあたって
視覚障害がある人、活字を読むことが困難な人であれば日本全国どこに住んでいても登録可能です。直接図書館に行くか、電話により登録を受け付けています。
3. 連絡先
〒169ー8586
東京都新宿区高田馬場q1ー23ー4
電話:03ー3209ー0241
URL: http://www.nittento.or.jp/
Ⅲ. サピエ図書館
1. 利用できるサービス
(1)点字データ、音声データのダウンロード
インターネットを経由してデイジー図書や点字図書のデータの配信をするサービスです。パソコンのデイジー再生用ソフトを利用したり、デイジー再生機器にダウンロードしたりして読書を楽しむことができます。
(2)オンラインリクエスト
点字図書館を通さずに自分自身で全国の図書館からデイジー図書や点字図書を借りることができます。すんでいる県の点字図書館とサピエへの登録が必要です。点字図書館に貸し出し依頼をした時と同じく、郵送で届きます。
2. 連絡先
電話:06ー6441ー1078
FAX:06ー6441ー1066
URL: https://www.sapie.or.jp/
本校には、これらの施設を利用している職員が何人かおりますので、気になることがあれば気軽にご相談いただけたらと思います。視覚障害のある職員も知らない情報を持っている方がいると思いますので、お互いに情報交換をして楽しい視覚障害者ライフを送ることができればいいなと考えています。
点字・情報通信 ホームページ版 第4号
発行:点字・情報研究係
点字指導者講習会に参加して
8月28日(月)、29日(火)に大阪市の山西記念福祉会館で行われた点字指導員講習会に参加してきました。これは、点字指導員認定講習会と交互に隔年で実施されているもので、今回の講習会には100名を超える参加者がありました。
今号の点字・情報通信では、そこで得られた内容についてご紹介させていただきたいと思います。
1.点字表記法・点訳の手引きの改訂について
2018年度中に新しい点字表記法が発行になるそうです。そして、それに伴い、点訳の手引きの改訂も行われるということでした。今回の講習会では、その主な内容に関する説明が行われました。今後の予定として、2017年11月に点字表記法改訂版の原案が日本点字委員会のHP等で公開され、意見の募集が行われるそうです。日頃の指導を通じて感じている事柄を点字表記に反映させる良い機会ですので、積極的にご意見を届けていただけたらと思います。
講義を聴いている中で、改訂の内容より、そもそもなぜ改訂が必要なのかというお話が非常に印象に残りました。なぜなら、点字を常用している私自身が、「分かち書きなんて、どっちだって良いようなことが多すぎる」、「どちらでも良いような内容を議論している日本点字委員会とは、非常にマニアックな集団だ」と思っていたからです。講義で聴かせていただいた改訂の理由とは、「大学入試等で、大学側から点字ではどのように書くのですか?」と聞かれることが多く、曖昧にしておくわけにはいかない。」、「時代とともに新たな専門用語などが誕生しており、こうした現状に対応していくには、ある一定期間ごとに改訂をしていかざるをえない。」ということでした。今回の改訂については、2012年から検討がスタートしており、6年にも及ぶ議論の末に発行されるそうです。これほどの長い経過を経て発行されるものですから、現場で指導に携わる私達も、新しい表記法をしっかりとマスターし、大切にしていきたいですね。
2.BESE(ベセ)の紹介
これまで点図の作成はEDELというソフトによって行われてきました。しかし、このデータを点字編集システムで取り込むことはできず、本文と図を別々のファイルで保存せざるをえませんでした。今回新しく作成されたBESE(ベセ)というソフトは、EDELで作成した点図データをBES形式に変換することができるというものです。つまり、点字編集システムで作成した文章の中に、点図を入れることができるようになりました。これまで以上に点字の教材作成の幅が広がったように思われます。このソフト自体はフリーですので、HP等からダウンロードしていただき、積極的にご活用いただけたらと思います。
3.ボランティア養成プログラムについて
神奈川県ライトセンターで行われているボランティア養成の流れについて説明が行われました。同センターには歩行訓練士などの専門的な資格を有する常勤の職員が4名もおり、点訳ボランティアだけでなく、朗読ボランティア、ヘルパーなどの養成も充実したプログラムの下に行われていました。また、中途視覚障害者に対する相談、支援業務なども行き届いており、そこで学んだ人が翌年盲学校に入学するという流れができあがっていました。地域格差の進む現状を感じるとともに、本県における中途失明者への支援のあり方について議論していくことの必要性を感じさせられました。
4.その他
休憩や昼食の時に全国各地のボランティアの方々と交流を深めることができました。どのグループの方も利用者の減少という問題に直面しており、点字文化消滅の危機という問題が私が想定していたより遙かに大きな課題となっていることを感じさせられました。生徒に直接点字を指導する立場にある私達自身が、文化の継承者であるという強い自覚と責任を持ち、指導に当たることが重要であると思います。
次回の講習会は2年後です。来年度は指導員認定講習会です。ぜひ、一人でも多くの方に挑戦していただき、2年後の講習会に本校からどなたかに参加していただき、全国の点訳ボランティアの方との繋がりを持っていただけたらと思います。
点字・情報通信 ホームページ版 第3号
発行:点字・情報研究係
第6回 校内点字練習会開催!
去る10月5日(水)の放課後、全校を対象とした「第6回校内点字練習会」が実施されました。
参加者は、中学部の点字使用生徒4名、墨字使用生徒1名、高等部の点字使用生徒1名。今回は、それに加えて、幼小学部職員10名、中学部職員7名、高等部普通科職員3名、高等部理療科職員5名、事務部職員(公仕さんを含む)4名、それに学生さんを加えた計36名でした。
会場の大会議室は、近年の校内点字競技会や練習会にはない熱気に包まれ、各問題の間の休憩時間に流れる音楽が聞き取りにくいほどでしたが、参加者が一斉に点字を書く30秒~2分間には点筆の音だけが響き、独特の緊張感をともなった良い時間が過ぎていきました。
今回初めて点字盤を触った方もいて、支援を担当した3名はやり方の説明に回りました。また、「50音書きや転写、聴写は初めて」という方も多く、隣の席の人に質問したり、生徒にやり方を聞いたりする声で、休憩時間もにぎやかでした。
結果は、翌日に担当職員から各職員に伝達。その際にいただいた意見や、生徒からの声を参考に、係が気づいた改善すべき点をあわせて、次回(来年度)の開催方法について今後検討していきたいと考えています。
職員からの感想
・初めて点字盤を触ったので、わからないことばかりだったが、周りに聞きながらなんとかやった。ちょっとたいへんだったけれど、いい経験になった。
・聴写問題は、生徒たちはすべてを聞き取って書いているのだと思って、すごいなと驚いたが、実際は、聞き取れた部分だけ書いていることが分かった。
・2日くらい前に点字盤に紙をつける方法を確認して、メ書きだけやろうと思って参加したが、転写問題も配られたのでやってみた。難しかったが、解答を配ってもらったので、それを見ながらやってみたい。
・転写や聴写のやり方が分からず、戸惑ってしまい難しかった。やり方が分かっていればもう少し書けたかもしれない。
・本校では昔は点字競技会が点字使用者だけでなく墨字使用者向けにも行われていた。点字をちょっと書いてみたり、点字についての話を聞いたりしていた。
・初任の研修以来、久しぶりに点字を書いたのでうまくいかなかったけれど、楽しかった。子どもたちもうれしそうだった。これを機会にまた練習してみようかなと思った。
・初めて点字を書いてみて、楽しかった。小学生に点字のお手紙を書けるように練習したい。
・初めて練習会に参加したが楽しかった。今後、月1回でもやってもらえれば参加したい。
・放課後の時間なので、参加しなかった墨字使用の生徒が時間を持て余してしまった。参加しない生徒への対応を考える必要がある。
生徒からの感想
・たくさんの人数で点字が書けて、とにかく楽しかった。またやりたい。
・すごい人数が集まったのでびっくりした。でも、とても楽しかった。また先生たちとやりたい。今度はいつやるんですか?
・先生方がいろいろ訊いてきたので逆に教えてあげたりした。おもしろかった。
・書き始める位置などがわからなそうだったので、近くの人に教えてあげた。自分の点はあまり上がらなかったけど、とても楽しかった。
・会場がとてもにぎやかで楽しかったけど、途中の音楽を聴くのを楽しみにしていたのでそれがよく聞こえなかったのはちょっと残念だった。もう一度練習したいな。
練習会後も点字盤の練習を続け、実際に小学生にあてて点字の手紙を書いてくれた職員もあり、係としてとてもうれしいことです。盲学校では点字を使用する児童生徒の数が減ってきており、直接は点字の指導に関われない職員もいるのが現状ですが、今後も、職員と児童生徒たちが、ともに点字を使うことを楽しみ、点字の力を磨き合える学校でありたいと思っています。
点字・情報通信 ホームページ版 第2号
発行:点字・情報研究係
点字の技能に関する資格試験
皆さんは、点字の技能に関する資格試験があるのをご存知ですか?
現在、日本国内で実施されている点字の技能に関する資格試験は2種類です。
(1)点字指導員資格認定講習会
(2)点字技能検定試験
ともに日本盲人社会福祉施設協議会が主催していますが、運営は(1)は情報サービス部会、(2)は社内検定試験実務委員会です。
(1)は1981年から始まりました。隔年開催で、偶数年が資格認定、奇数年は指導員資格保持者対象の研修会です。
資格認定のためには、まず事前に課題文(点訳・校正問題)を提出、その審査に通ると受講資格を得られます。3日間の全講義に出席した人のうち最終日の点訳・校正問題の試験(2時間半)の合格者には認定証書が交付されます。受講料は13,000円です。
(2)は2001年から始まりました。毎年11月中旬ごろ、東京をはじめとする4会場で実施されます。資格認定のためには、点字で書かれている選択式の学科試験(障害者福祉、視覚障害児教育等)と点字技能試験(点訳・校正問題)の2種類があります。学科と実技のいずれかに合格した人は一部合格者台帳に登録され、次回受験の際、合格科目の試験が免除されます。合格者には「点字技能師」の資格が与えられます。受験料は15,000円です。こちらは国家資格をめざしていますが、受験者数が3桁に届かないため、今のところ社内検定という形になっています。この試験合格を目指す人のために、毎年8月ごろ「点字技能チャレンジ講習会」が2日間開催されています。
両試験とも、実技は点字器と点字タイプライタ―で行われており、点字技能師資格を持っている人は、(1)の課題文提出は免除されます。
(1)には、講義があり、研修要素がありますが、(2)にはありません。また、(2)の試験は参考書の使用は可能ですが、(2)は不可です。そのほかいくつかの違いがありますので、詳細を知りたい方は、各HPまたは視覚障害No.306「点字に関する資格制度の推移と今後」をご参照ください。
今年度、(1)の講習会に本校から3名の先生が、見事、事前の課題文審査を通過して、自主研修で参加しました。
参加者のうちの本校職員Aの体験談をご紹介します。
「点字指導員講習会で学んだこと」 8月末に3日間、職員B、Cと共に岐阜まで点字指導員講習会に参加するために、片道6時間ドライブを決行してきました。運転してくれたC先生、ありがとうございました。そこで行われた講義のうち、「パソコン点訳の指導ポイント」で教わったことで、私が個人的に知ることができてよかったと感じたことを述べたいと思います。 1つめは、6点入力可能なパソコンの見分け方です。メモ帳を開いて、ホームポジションで左右の人差し指から薬指までの6つのキーを同時に押します。これでメモ帳上にすべてのキーが順不同で入力されれば、6点入力が可能です。生徒がパソコンで6点入力を希望した時などに活用できる知識だと、パソコン好きな私は大いに喜びました。 2つめは、点訳者が使用している点訳検索システムです。「点訳ナビゲーター」と「鍼灸・医学用語の点訳・音訳辞書システム」の2つです。帰宅後、両方とも使用してみましたが、点訳ナビゲーターは点字に関する能力の低さが災いしてか、使用方法がよくわかりませんでした。点字図書館などの蔵書のための点訳を行う方向けのシステムのようなので、盲学校内ではあまり活躍しないかもしれません。「鍼灸・医学用語の点訳・音訳辞書システム」はなかなか使えそうです。専攻科の先生は、東洋・西洋にかかわらず、医学関係のワードの点訳についてはバッチリになれる、かもしれません。両者とも、音声パソコン対応のwebページなので、全盲の先生もご活用いただけると思います。 3つめは、点訳の練習には、不要になってしまう資料ではなく、誰かが使用する資料を用いることが望ましいということです。これを誰かが読んでくれる、と考えながら点訳をすれば、自然と完成度を高める気持ちがわいてくるものです。みなさん、かわいい生徒へ愛をこめたお手紙など書いてみてはいかがでしょうか? 他にもいろいろと学ばせていただきましたが、盲学校内で活用できそうなことを挙げてみました。少しでもみなさまの点訳のお役に立つことが出来れば光栄です。 |
点字通信 HP版第1号
発行:点字・情報研究係
1.はじめに
本校は県内唯一の視覚障害教育を行う学校です。在籍する生徒のみならず、県内に在住する視覚障害児・者の教育、相談、支援活動を積極的に行っています。こうした活動を継続し、維持・発展させていくため、本校では様々な取り組みをしています。今回は点字を例にあげて、その様子を紹介させていただくこととしました。
2.取り組み内容について
(1)点字競技会(練習会)を学校あげて取り組む行事とし、点字を大切にする雰囲気を盛り上げる。
11月1日は日本の点字が誕生した日です。1890年のことです。この日の前後に全国の盲学校では点字競技会が行われています。これまで本校では、点字使用の生徒のみの参加でしたが、今年度から、生徒、職員、誰でも参加できるようにしようと準備しています。そうすることで、学校全体として、点字を大切にする雰囲気を高めていきたいと考えています。
(2)点字の指導案の作成を心がけている。
今年度から、全ての職員が年に1度は点字の指導案を作成するように心がけています。指導案には、見出し、表などがあり、高い点訳の技術が必要です。こうしたことに取り組むことによって、学校全体として、点字に関する高い専門性を培っていきたいと考えています。
(3)係内で同一の人が点字の資料作成にあたらないよう工夫している。
同じ人が点字の資料作成にあたらないように工夫しています。点字は文字であり、言葉です。言葉は日ごろから丁寧に使うことで磨かれていきます。こうしたことから、多くの職員が点字に携わることで、高い技術を維持できるように努めています。
(4)日ごろから点字で伝言を書くように心がけている。
本校には何名かの点字使用の職員がいます。そうした職員に対して、伝言を点字で書くように心がけています。これは当然のことのようですが、IT機器が普及した現代においては、とかく、そうした機器に頼りやすいものです。日ごろから点字を書くことを習慣付けることによって、点字の専門性を維持できるように努力しています。
3.終わりに
視覚障害教育には点字だけでなく、歩行やレンズ、音声パソコン、その他様々な専門的知識と技術が必要です。今後も学校全体で様々な工夫をこらし、本県における視覚障害教育のセンター的役割を担っていきたいと考えています。