教科等における特色
【教科等における特色】

 

 国語
墨点字(国語)
国語の教科書
  • 視覚障害児童生徒は、見えない、または見えにくい状況にあることが原因で、言語と概念が正しく結びついていない場合が少なくありません。そのため国語科では視覚以外のすべての感覚を活用して、概念の形成を図り、言語による理解や表現の力を培っています。

  • 点字の読み書きに関しては、自立活動の時間に基礎的な部分の習得を行い、さらに教科の学習の中でも系統的な指導を行っています。

  • 漢字・漢語の指導は、点字使用の児童生徒も行っています。漢字・漢語の表意性に焦点を当て、関心・理解を深め、将来、ワープロソフトなどを使って正しい漢字を選んで文章を作成するなど、自学自習ができる知識や態度・習慣の形成を目指しています。

  • 弱視の児童生徒の漢字の指導は、細部まで正確に見分けることが難しく、字形が類似している漢字を相互に混乱したまま覚えたりしないように、漢字の部首や部品の名前と書き方をていねいに学習し、言葉で漢字の書き方を説明できるようにしています。

  • 話し言葉や作文の指導においては、視覚以外の諸感覚を活用して、自分の周囲の状況を把握し、それを表現する習慣を身につけさせる指導を行っています。

  • 話すことや作文の指導などを通じて、物事を論理的に思考し、筋道立てて話す力や話し方、聞き方についての指導にも力を入れています。
 
社会科イラスト
  • 弱視の児童生徒は、通常の活字教科書を使用したり、弱視児童生徒のための拡大教科書を使用したりします。必要に応じてグラフや地図などの資料を拡大して授業をおこないます。

  • 点字教科書使用の児童生徒に対しては、教科書の資料のほかに必要に応じて立体コピー、立体地図、模型などを使用して授業をおこないます。
浮き出し地球義 浮き出し地図 立体地図
 立体地球儀  立体地図
(陸と海の区別あり)
 立体地図
(高低差あり)
  • 触って確かめることができるように、社会科資料室に模型や実際に使われていた古い道具などが用意されています。

  • 実際にその場へ行って学習ができるよう公共交通機関を利用して、社会科見学の機会を多く設けています。
 
算数 数学
墨点字(算数数学)
三角定規
  • 学習内容、個々の能力、用途などに応じた選択ができるように厚さや長さ、幅等の違うものさしを用意したり、機能の違うコンパスを用意したりするなど、様々な教具を準備し、学習が円滑に進む工夫を行っています。

  • 平面図形や空間図形を点図でとらえなくてはならない児童・生徒に対し、具体物を利用して図形の概念形成をすることで、抽象的な思考を育てられるよう教材作りを行っています。その際手触りの良い材料を用意したり、児童・生徒の意見をフィードバックして改良したりすることで、よりよい教材作りを心がけています。

  • 点字使用者にとって、大きな位の数の暗算や、小数の計算を筆算することは難しいです。そのような場面では視覚障害者用のそろばんを利用するよう指導しています。年に1回冬に行われている視覚障害者珠算検定(日本商工会議所主催)にも挑戦し、数名がそれぞれの能力にあったクラスを受検しています。

定規   立体 盲人用そろばん
レーズライターで作図 立体の触察  そろばんを使った計算

 
試験管
  • 基本的には一般の教科書と同じ内容を学習しますが、実験・観察の方法を工夫したり、児童生徒が自分で結果を確認できるように、「音声付き温度計」や「感光器」という明暗を音の高低で確認できる用具を使っています。また、見えにくい子は効率的な触り方(触察)について学び、ガラス器具や加熱器具の操作も安全に行えるように練習しています。

  • 身近な自然を意識的に調べたり、できるだけ実物に触れたりする体験を、小さいころから積み上げていくことは、見えにくい子にとって、とても大切なことです。生物の学習では、栽培飼育体験を通して成長や変化の様子を体感することで、少しずつ見通しが立てられるようになっていきます。

         
     音声付き温度計  感光器  移動博物館
 
ピアノ
  • 視覚に障害のある児童生徒にとって、聴覚を活用して感じ取ることのできる音楽は楽しい学習活動のひとつです。点字楽譜を使用しての学習も行いますが、何よりも音をよく集中して聴くことを大切にしています。

  • 聴覚を活用した学習が中心になりますが、歌唱や器楽演奏などの表現活動を通じて、自分の身体を使って美しく豊かな音楽を表現する体験ができるような学習内容を工夫しています。

  • 少人数の学習グループによる授業なので、いろいろな楽器にじっくり触れることができます。またいろいろなジャンルの音楽に親しんだり、総合的な学習の時間ともリンクしながら、日本の伝統音楽に力を入れたりしています。
 
クレヨン
  • 平面作品の指導については、線を確認するためにレーズライター用紙を使ったり、立体コピーを使ったりします。色の指導は難しいのですが、日常生活の中にある色等をいつも話題にあげながら色のイメージを持てるようにしています。

  • 立体作品については、土粘土、木材、石材、金属、紙材、発泡スチロール、その他いろいろな素材に触れ、それぞれのよさを感じ取りながら制作しています。特に子どもたちは、粘土で焼き物を作るのが好きなようです。
 
ゴールボールのボール
  • ゴールボール・フロアバレーボール・サウンドテーブルテニス・グランドソフトボールなど視覚障害スポーツを中心に学習を進めています。

  • そのほか陸上競技や水泳・体操・表現活動なども安全に注意して記録や技術の向上を目指してチャレンジしています。

  • 専攻科の成人の生徒には、生涯を通して体力を維持するための様々な体操や運動も紹介しています。
 
調理実習の様子
  • よりよい家庭生活を送るために、生活に必要な基礎的な知識と基本的な技能の習得を目指し、小学部から高等部まで系統的に進めています。

  • 一人一人の見え方に応じて、実物や模型を使いながら触って確かめたり動かしたりして、分かりやすく授業を進めています。

  • 視覚障害者用に作られた用具や市販の使いやすく便利な家庭用品を使い、実生活に即した授業を行っています。

  • つくる喜び、完成した喜びが味わえるように、授業内容を工夫しています。

家庭科の作品(1) 家庭科の作品(2) 家庭科の作品(3)

家庭科の作品(4) 家庭科の作品(5)
 
 技術
墨点字(技術)
デスクトップPC
中学部の技術科では以下の3つの内容に分けて学習します。
  • 生活を豊かにするものを作ろう(木材などの加工)
  • エネルギーを変換して利用しよう(電気エネルギーと機械)
  • 情報を活用して生活に生かそう(情報とコンピュータ)
 中学校で学習する内容のほか、盲学校ならではの、のこぎり引きや釘打ち、組み立てなど、実際に工具を使うときの工夫や補助具の利用などを学習します。仕組みを理解するために模型や触図、実際の体験などを多く取り入れて学習します。近年、視覚障害者の利用が高まったコンピュータでは、生活におけるコンピュータや情報の利用のほか、視覚障害者向けのソフトの利用方法、ショートカットキーなどの学習をしています。技術科における様々な工夫や学習が実生活でのヒントとなり、役立つことがあるようにと考えています。
 
墨点字(英語)
世界の子どもたち
  • 少人数のため、英語を「聞く」、「話す」ことに多くの時間を使うことができ、それが視覚的な障害を補うためにも有効な指導であると考えています。

  • 全盲生徒の英語指導においては、英語点字を読むこと、書くことに重点を置いています。2級点字(略字・縮語等)は中学部2年生から段階的に導入し、高等部でも随時確認しながら学習しています。

  • 弱視の生徒にとっては英語の綴りを細部まで認知するのがむずかしく、英単語を読み、覚えるのを苦手としている生徒も少なくありませんが、カードを活用する等、個々の生徒に応じて工夫して指導しています。

  • 障害を併せ有する生徒の英語指導においては、英語の歌やCD、テープ等を多用し音声指導を大切にしながら、英語を学ぶことの楽しさを指導目標の1つに考えています。

  • ALT(外国語指導助手)の訪問を英語学習の発表の場として、目的を持って学習できるようにしています。ALTとのコミュニケーションを大切にしながら、個々の生徒が英語が「話せた」、「通じた」という喜びがもてるように指導しています。
 
 自立活動
墨点字(自立活動)
点字盤
 「自立活動」とは、障害による様々な困難を改善・克服するために必要な知識、技能、態度および習慣を養うため、特別支援学校に独自に設けられている領域です。
 盲学校の場合、見えない、または見えづらい状態から起こる「歩けない」「周囲の状況が分からない」「読めない」等の様々な学習上あるいは生活上の活動の制限を改善して、心と身体の調和的発達の基盤を培うのが「自立活動」の目的といえます。
 本校では、「自立活動」という時間が特設されており、また学校の全教育活動を通して、幼児児童生徒一人ひとりの発達段階やニーズに応じた自立活動の指導が行われています。

 主な指導内容は以下のとおりです。
点字指導
触読の画像  点字一文字を指先で読む練習から始め、徐々に長い文章を必要な速さで読む練習を行います。
 点字の書き方のルール(分かち書き等)の学習、点字タイプライターや点字盤で正しく書く練習も行います。
 校内では、点字の読み書きの能力の向上を目指して年2回の点字競技会が実施されており、隔年で実施される全国盲学生点字競技会にも小中高等部の児童生徒が参加しています。

弱視指導
 自分の見え方を理解し、効率的な目の使い方や理解のしかたを身につけたり、見やすい環境を整えたりする力をつけていくための学習を行っています。目と手の協応動作、効率よく作業を進める方法のほか、弱視レンズ(遠用・近用)や拡大読書器などの補助具の活用のしかたも学びます。
 眼疾患に関する知識を身につけ自分の目との付き合い方を学んだり、社会生活で必要な文字や文書の書き方等を練習したりすることもあります。

歩行指導
 自分の体や動きの理解、方向や位置関係、バランスのとれた歩行姿勢などの基礎から、教室、学校周辺および通学路等の歩行指導を行います。
 安全で能率的な白杖操作技術の習得と合わせ、歩行上の手がかりの活用や地図の理解、交通機関の利用、援助依頼の方法等を身につけます。
 単独通学を目指す生徒には、安全に通学できるよう、自宅・学校間のルートの歩行についてそれぞれのニーズに合わせた指導が通学時間帯や放課後・長期休業中等にも行われます。
 上記以外にも、手指操作の向上、ADL(日常生活動作能力)、コンピュータ等情報機器の活用に関する指導などが挙げられます。障害のある児童生徒が、自分に必要とされる学習に主体的に取り組むことで、力を伸ばしています。
 
 各教科等を合わせた指導墨点字(各教科を合わせた指導) 国語の教科書
  • 障害を併せ有する児童生徒には、一人ひとりに合った教育内容が考えられています。日常生活の指導、生活単元学習、作業学習などです。

  • 日常生活の指導では、例えば、衣服の着脱、手洗い、排泄、食事などの基本的習慣の内容やあいさつ、言葉づかい、係活動、清掃、決まりを守ることなどの日常生活や社会生活において必要な内容を学習していきます。

  • 生活単元学習では、児童生徒の生活上の目標を達成したり課題を解決したりするために一連の活動を組織的に経験して、自立的な生活ができるように実際的・総合的に学習していきます。
     例えば、「誕生会をしよう」という単元では、どういう内容にするか、分担はどうするか、プレゼントはどうするか等を話し合い、実行し、まとめをするという一連の単元活動を行います。そして、その活動の中で主体的に活動することや目標達成の意欲などを培うものです。

  • 作業学習では、作業活動を学習の中心にして、働く気持ちを高めて、職業生活や社会自立に必要な力を付けていく学習です。
    本校では、牛乳パックを使った紙漉き(カレンダー製作)や椅子製作、紙薪(ペーパーログ)、アルミ缶つぶし、園芸活動、販売学習などの作業を行っています。

  • 小学部・中学部・高等部が協力して、エコキャップ運動を行っています。ペットボトルのキャップを集める「エコキャップ運動」について、年度初めに全校に向けて活動の趣旨を説明して、収集し、年度末に運動本部に送ります。収集箱を回りキャップを集めること、キャップを洗うこと、キャップに付いているシールを剥がすこと、キャップの数を数えること等、児童生徒が分担し合って進めています。 令和2年度までで累計547,940個になりました。