点字通信
点字・情報通信 ホームページ版 第4号
発行:点字・情報研究係
点字指導者講習会に参加して
8月28日(月)、29日(火)に大阪市の山西記念福祉会館で行われた点字指導員講習会に参加してきました。これは、点字指導員認定講習会と交互に隔年で実施されているもので、今回の講習会には100名を超える参加者がありました。
今号の点字・情報通信では、そこで得られた内容についてご紹介させていただきたいと思います。
1.点字表記法・点訳の手引きの改訂について
2018年度中に新しい点字表記法が発行になるそうです。そして、それに伴い、点訳の手引きの改訂も行われるということでした。今回の講習会では、その主な内容に関する説明が行われました。今後の予定として、2017年11月に点字表記法改訂版の原案が日本点字委員会のHP等で公開され、意見の募集が行われるそうです。日頃の指導を通じて感じている事柄を点字表記に反映させる良い機会ですので、積極的にご意見を届けていただけたらと思います。
講義を聴いている中で、改訂の内容より、そもそもなぜ改訂が必要なのかというお話が非常に印象に残りました。なぜなら、点字を常用している私自身が、「分かち書きなんて、どっちだって良いようなことが多すぎる」、「どちらでも良いような内容を議論している日本点字委員会とは、非常にマニアックな集団だ」と思っていたからです。講義で聴かせていただいた改訂の理由とは、「大学入試等で、大学側から点字ではどのように書くのですか?」と聞かれることが多く、曖昧にしておくわけにはいかない。」、「時代とともに新たな専門用語などが誕生しており、こうした現状に対応していくには、ある一定期間ごとに改訂をしていかざるをえない。」ということでした。今回の改訂については、2012年から検討がスタートしており、6年にも及ぶ議論の末に発行されるそうです。これほどの長い経過を経て発行されるものですから、現場で指導に携わる私達も、新しい表記法をしっかりとマスターし、大切にしていきたいですね。
2.BESE(ベセ)の紹介
これまで点図の作成はEDELというソフトによって行われてきました。しかし、このデータを点字編集システムで取り込むことはできず、本文と図を別々のファイルで保存せざるをえませんでした。今回新しく作成されたBESE(ベセ)というソフトは、EDELで作成した点図データをBES形式に変換することができるというものです。つまり、点字編集システムで作成した文章の中に、点図を入れることができるようになりました。これまで以上に点字の教材作成の幅が広がったように思われます。このソフト自体はフリーですので、HP等からダウンロードしていただき、積極的にご活用いただけたらと思います。
3.ボランティア養成プログラムについて
神奈川県ライトセンターで行われているボランティア養成の流れについて説明が行われました。同センターには歩行訓練士などの専門的な資格を有する常勤の職員が4名もおり、点訳ボランティアだけでなく、朗読ボランティア、ヘルパーなどの養成も充実したプログラムの下に行われていました。また、中途視覚障害者に対する相談、支援業務なども行き届いており、そこで学んだ人が翌年盲学校に入学するという流れができあがっていました。地域格差の進む現状を感じるとともに、本県における中途失明者への支援のあり方について議論していくことの必要性を感じさせられました。
4.その他
休憩や昼食の時に全国各地のボランティアの方々と交流を深めることができました。どのグループの方も利用者の減少という問題に直面しており、点字文化消滅の危機という問題が私が想定していたより遙かに大きな課題となっていることを感じさせられました。生徒に直接点字を指導する立場にある私達自身が、文化の継承者であるという強い自覚と責任を持ち、指導に当たることが重要であると思います。
次回の講習会は2年後です。来年度は指導員認定講習会です。ぜひ、一人でも多くの方に挑戦していただき、2年後の講習会に本校からどなたかに参加していただき、全国の点訳ボランティアの方との繋がりを持っていただけたらと思います。
点字・情報通信 ホームページ版 第3号
発行:点字・情報研究係
第6回 校内点字練習会開催!
去る10月5日(水)の放課後、全校を対象とした「第6回校内点字練習会」が実施されました。
参加者は、中学部の点字使用生徒4名、墨字使用生徒1名、高等部の点字使用生徒1名。今回は、それに加えて、幼小学部職員10名、中学部職員7名、高等部普通科職員3名、高等部理療科職員5名、事務部職員(公仕さんを含む)4名、それに学生さんを加えた計36名でした。
会場の大会議室は、近年の校内点字競技会や練習会にはない熱気に包まれ、各問題の間の休憩時間に流れる音楽が聞き取りにくいほどでしたが、参加者が一斉に点字を書く30秒~2分間には点筆の音だけが響き、独特の緊張感をともなった良い時間が過ぎていきました。
今回初めて点字盤を触った方もいて、支援を担当した3名はやり方の説明に回りました。また、「50音書きや転写、聴写は初めて」という方も多く、隣の席の人に質問したり、生徒にやり方を聞いたりする声で、休憩時間もにぎやかでした。
結果は、翌日に担当職員から各職員に伝達。その際にいただいた意見や、生徒からの声を参考に、係が気づいた改善すべき点をあわせて、次回(来年度)の開催方法について今後検討していきたいと考えています。
職員からの感想
・初めて点字盤を触ったので、わからないことばかりだったが、周りに聞きながらなんとかやった。ちょっとたいへんだったけれど、いい経験になった。
・聴写問題は、生徒たちはすべてを聞き取って書いているのだと思って、すごいなと驚いたが、実際は、聞き取れた部分だけ書いていることが分かった。
・2日くらい前に点字盤に紙をつける方法を確認して、メ書きだけやろうと思って参加したが、転写問題も配られたのでやってみた。難しかったが、解答を配ってもらったので、それを見ながらやってみたい。
・転写や聴写のやり方が分からず、戸惑ってしまい難しかった。やり方が分かっていればもう少し書けたかもしれない。
・本校では昔は点字競技会が点字使用者だけでなく墨字使用者向けにも行われていた。点字をちょっと書いてみたり、点字についての話を聞いたりしていた。
・初任の研修以来、久しぶりに点字を書いたのでうまくいかなかったけれど、楽しかった。子どもたちもうれしそうだった。これを機会にまた練習してみようかなと思った。
・初めて点字を書いてみて、楽しかった。小学生に点字のお手紙を書けるように練習したい。
・初めて練習会に参加したが楽しかった。今後、月1回でもやってもらえれば参加したい。
・放課後の時間なので、参加しなかった墨字使用の生徒が時間を持て余してしまった。参加しない生徒への対応を考える必要がある。
生徒からの感想
・たくさんの人数で点字が書けて、とにかく楽しかった。またやりたい。
・すごい人数が集まったのでびっくりした。でも、とても楽しかった。また先生たちとやりたい。今度はいつやるんですか?
・先生方がいろいろ訊いてきたので逆に教えてあげたりした。おもしろかった。
・書き始める位置などがわからなそうだったので、近くの人に教えてあげた。自分の点はあまり上がらなかったけど、とても楽しかった。
・会場がとてもにぎやかで楽しかったけど、途中の音楽を聴くのを楽しみにしていたのでそれがよく聞こえなかったのはちょっと残念だった。もう一度練習したいな。
練習会後も点字盤の練習を続け、実際に小学生にあてて点字の手紙を書いてくれた職員もあり、係としてとてもうれしいことです。盲学校では点字を使用する児童生徒の数が減ってきており、直接は点字の指導に関われない職員もいるのが現状ですが、今後も、職員と児童生徒たちが、ともに点字を使うことを楽しみ、点字の力を磨き合える学校でありたいと思っています。
点字・情報通信 ホームページ版 第2号
発行:点字・情報研究係
点字の技能に関する資格試験
皆さんは、点字の技能に関する資格試験があるのをご存知ですか?
現在、日本国内で実施されている点字の技能に関する資格試験は2種類です。
(1)点字指導員資格認定講習会
(2)点字技能検定試験
ともに日本盲人社会福祉施設協議会が主催していますが、運営は(1)は情報サービス部会、(2)は社内検定試験実務委員会です。
(1)は1981年から始まりました。隔年開催で、偶数年が資格認定、奇数年は指導員資格保持者対象の研修会です。
資格認定のためには、まず事前に課題文(点訳・校正問題)を提出、その審査に通ると受講資格を得られます。3日間の全講義に出席した人のうち最終日の点訳・校正問題の試験(2時間半)の合格者には認定証書が交付されます。受講料は13,000円です。
(2)は2001年から始まりました。毎年11月中旬ごろ、東京をはじめとする4会場で実施されます。資格認定のためには、点字で書かれている選択式の学科試験(障害者福祉、視覚障害児教育等)と点字技能試験(点訳・校正問題)の2種類があります。学科と実技のいずれかに合格した人は一部合格者台帳に登録され、次回受験の際、合格科目の試験が免除されます。合格者には「点字技能師」の資格が与えられます。受験料は15,000円です。こちらは国家資格をめざしていますが、受験者数が3桁に届かないため、今のところ社内検定という形になっています。この試験合格を目指す人のために、毎年8月ごろ「点字技能チャレンジ講習会」が2日間開催されています。
両試験とも、実技は点字器と点字タイプライタ―で行われており、点字技能師資格を持っている人は、(1)の課題文提出は免除されます。
(1)には、講義があり、研修要素がありますが、(2)にはありません。また、(2)の試験は参考書の使用は可能ですが、(2)は不可です。そのほかいくつかの違いがありますので、詳細を知りたい方は、各HPまたは視覚障害No.306「点字に関する資格制度の推移と今後」をご参照ください。
今年度、(1)の講習会に本校から3名の先生が、見事、事前の課題文審査を通過して、自主研修で参加しました。
参加者のうちの本校職員Aの体験談をご紹介します。
「点字指導員講習会で学んだこと」 8月末に3日間、職員B、Cと共に岐阜まで点字指導員講習会に参加するために、片道6時間ドライブを決行してきました。運転してくれたC先生、ありがとうございました。そこで行われた講義のうち、「パソコン点訳の指導ポイント」で教わったことで、私が個人的に知ることができてよかったと感じたことを述べたいと思います。 1つめは、6点入力可能なパソコンの見分け方です。メモ帳を開いて、ホームポジションで左右の人差し指から薬指までの6つのキーを同時に押します。これでメモ帳上にすべてのキーが順不同で入力されれば、6点入力が可能です。生徒がパソコンで6点入力を希望した時などに活用できる知識だと、パソコン好きな私は大いに喜びました。 2つめは、点訳者が使用している点訳検索システムです。「点訳ナビゲーター」と「鍼灸・医学用語の点訳・音訳辞書システム」の2つです。帰宅後、両方とも使用してみましたが、点訳ナビゲーターは点字に関する能力の低さが災いしてか、使用方法がよくわかりませんでした。点字図書館などの蔵書のための点訳を行う方向けのシステムのようなので、盲学校内ではあまり活躍しないかもしれません。「鍼灸・医学用語の点訳・音訳辞書システム」はなかなか使えそうです。専攻科の先生は、東洋・西洋にかかわらず、医学関係のワードの点訳についてはバッチリになれる、かもしれません。両者とも、音声パソコン対応のwebページなので、全盲の先生もご活用いただけると思います。 3つめは、点訳の練習には、不要になってしまう資料ではなく、誰かが使用する資料を用いることが望ましいということです。これを誰かが読んでくれる、と考えながら点訳をすれば、自然と完成度を高める気持ちがわいてくるものです。みなさん、かわいい生徒へ愛をこめたお手紙など書いてみてはいかがでしょうか? 他にもいろいろと学ばせていただきましたが、盲学校内で活用できそうなことを挙げてみました。少しでもみなさまの点訳のお役に立つことが出来れば光栄です。 |
点字通信 HP版第1号
発行:点字・情報研究係
1.はじめに
本校は県内唯一の視覚障害教育を行う学校です。在籍する生徒のみならず、県内に在住する視覚障害児・者の教育、相談、支援活動を積極的に行っています。こうした活動を継続し、維持・発展させていくため、本校では様々な取り組みをしています。今回は点字を例にあげて、その様子を紹介させていただくこととしました。
2.取り組み内容について
(1)点字競技会(練習会)を学校あげて取り組む行事とし、点字を大切にする雰囲気を盛り上げる。
11月1日は日本の点字が誕生した日です。1890年のことです。この日の前後に全国の盲学校では点字競技会が行われています。これまで本校では、点字使用の生徒のみの参加でしたが、今年度から、生徒、職員、誰でも参加できるようにしようと準備しています。そうすることで、学校全体として、点字を大切にする雰囲気を高めていきたいと考えています。
(2)点字の指導案の作成を心がけている。
今年度から、全ての職員が年に1度は点字の指導案を作成するように心がけています。指導案には、見出し、表などがあり、高い点訳の技術が必要です。こうしたことに取り組むことによって、学校全体として、点字に関する高い専門性を培っていきたいと考えています。
(3)係内で同一の人が点字の資料作成にあたらないよう工夫している。
同じ人が点字の資料作成にあたらないように工夫しています。点字は文字であり、言葉です。言葉は日ごろから丁寧に使うことで磨かれていきます。こうしたことから、多くの職員が点字に携わることで、高い技術を維持できるように努めています。
(4)日ごろから点字で伝言を書くように心がけている。
本校には何名かの点字使用の職員がいます。そうした職員に対して、伝言を点字で書くように心がけています。これは当然のことのようですが、IT機器が普及した現代においては、とかく、そうした機器に頼りやすいものです。日ごろから点字を書くことを習慣付けることによって、点字の専門性を維持できるように努力しています。
3.終わりに
視覚障害教育には点字だけでなく、歩行やレンズ、音声パソコン、その他様々な専門的知識と技術が必要です。今後も学校全体で様々な工夫をこらし、本県における視覚障害教育のセンター的役割を担っていきたいと考えています。