ライフサイクルに応じた支援
乳幼児期の支援
《乳幼児期》

★ この時期の子どもは?
  • 一生のうちで最も発達が著しく、変化が大きい時期です。例えば、おっぱいだけしか飲んでいないがひとりで食べることかできるようになったり、寝返りも打たない状態から、歩くことかできるようになったりします。
  • 視力の面でも、生後3か月~3歳が急激に視力が伸び、最も重要な時期です。
★ 視覚に障害がある子どもの発達も同じ?
  • 同じですが、視覚からの刺激がなかったり少なかったりする分、早期から適切な手立てをしないと発達が遅れがちになる場合かあります。
★ ではどうすれば?
  • 残された視覚や視覚以外の感覚を効果的に活用することによってすこやかな発達を促すことができます。
  • 例えば、歩行を促すために、好きな玩具等の音を少し離れたところから出してあげる方法などがあります。意欲的に食事をするためには、「手づかみ食べ」はとても有効です。
《幼児期(保育園・幼稚園)》

★ この時期の子どもは?
  • 活発に動き、自分でできることが増え、基本的生活習慣が確立される時期です。
  • 多くのお子さんが保育園や幼稚園に通っています。
★ 視覚に障害のある子どもは?
  • 早期から適切な手段を講じることで、基本的生活習慣を確立させることが可能です。
  • 多くのお子さんが盲学校幼稚部や一般の保育園や幼稚園に通っています。
★ この時期の配慮点は?
  • 一般の保育園や幼稚園に通っている場合は、園内外における安全の確保に気をつけましょう。例えば、危険な場所を知らせておくこと、よく使う場所や物の位置を知らせておくこと等は大切です。
  • 日常的な配慮としては、保育室内外に置かれている物の突出をなくす、手で触って落下しやすいものや壊れやすい物を片付ける、ドアを半開きにしておかない等です。
  • 就学に向けての準備が必要です。
  • その内容は、就学先が盲学校小学部の場合と一般の小学校の場合とでは少し異なってきます。


学齢期の支援
《学齢期》

 見えにくさをかかえる子供たちにとって、環境が変わる節目の時期は、特に注意が必要な時期です。 
 「学校に入学すること」も大きな節目の一つです。小学校に入学すると文字を使った学習が始まります。また、地理的にも、人間関係においても、環境がそれまでよりも大きく広がります。また、集団行動を求められることも大きな変化の要因です。学年進行に伴って、環境も、求められる能力も変わるため、それぞれの時期に応じた支援が必要になってきます。
 たとえば教科書の文字サイズは、学年進行と共に小さくなります。それぞれの見えにくさと文字の大きさに応じた補助具の使用と支援方法を考えていく必要があるのです。

教科書の文字サイズの例

《学齢期の子供たちの一般的問題》
 
 先天的な弱視児の場合、自分の見えにくさに気づかないことが多いのです。中途視覚障害の場合には、今までの見え方と比較して、「見えにくい」といえるのですか、その差がわからなければ自覚できないようです。こういった場合には、周りにいる人たちが、行動をよく観察し、見えにくい様子がわかったら、見え方に応じた支援をしていくことが必要になります。
 
 丁寧に教えてあげればできることも、「見えにくいから」と周囲か手を出してしまうことも多く、授術や方法を獲得する機会か奪われてしまうこともあります。その結果、経験する機会を奪われ、「できない」状態になってしまうこともあるのです。
 
 就学前に「弱視」という障害を理解してもらうことが重要です。入学前には通学路や校内の様子をあらかじめ見ておくとよいと思います。特に下駄箱や教室など区別がつきやすく、段差もあらかじめわかっていればつまずかないですみます。
 
 弱視児は目を近づけて見るため、保健指導の観点から姿勢をよくして目を難して見るように指導されてしまうこともあります。目を近づけたら目か悪くなることはありませんし、弱視の子供たちの場合、目を近づけてみることはよく見ようとするために起こることなので禁止されると見えなくなってしまいます。弱視の子供たちの見え方を理解してもらい、目を近づけても疲労が少なくなるような配慮をすることが大切です。
 
 相手か誰であるかわかりにくいため、自分から声をかけることか苦手です。あらかじめ弱視であることを理解してもらい、声をかけるときに名前を言ってもらうなど、少し配慮してもらえればコミュニケーションがスムーズに取れるようになります。
 
 明るさや暗さに対する順応が遅い子供がいます。また明るいところで見えにくくなったり、暗いと見えなかったりすることもあるので、「視力が○○だから」、「教室でよく見えるから…」ということで油断すると、予想外に見えていないこともあるので注意が必要です。弱視児のかかえる見えにくさについては、弱視の見えにくさを参考にしてください。

《小学校低学年》

 入学当初には、ものを見る意欲、注視ができるか、ものの形や位置関係、目と手の協応動作ができるかなど、学習をするための準備かできていることが必要です。また、1年生の文字の学習は、50音、漢字、カタカナなど覚えていかなけれぱならないため、就学準備を事前に進めておくことはもちろんてすか、入学後も担任の先生や保護者、相談機関ての個別の指導が必要になってきます。この時期に基礎基本を獲得することがその後の学習を効率的にすすめるために非常に大切になるのです。
 本校でも、「目の相談」で就学の準備や入学後の指導も継続して実施しています。
 
《小学校中学年》
 
 中学年になると板書の書写も多<なり、学習量も増えるので、効率的に学習をすすめる力が求められます。この時期までに必要な子には、遠用弱視レンズ(単眼鏡)の活用が十分にできるようにしておきたいものです。辞書を使った学習や、地図の学習も始まるので、近用弱視レンズや拡大読書器を活用して、能率よく学習ができるようにします。
 
《小学校高学年》
 
 図工の時間に彫刻刀やのこぎりを使ったり、家庭科で裁縫や調理の実習があったりと、安全面に配慮が必要になります。目を近づけてみることの多い弱視児にとって、危険なものが目に近づくことは安全面への十分な配慮が必要になります。場合によっては保護眼鏡をかけたり、拡大読書器をとおして見るなど、事故防止の手段を講じる必要があります。また、理科の実験の際も、実験の経過や結果観察できるようにするとともに、安全面への配慮も必要になります。
 
《中学校・高等学校》
 
 中学校、高等学校では、学習量も唱え、板書の量も多くなります。また配布されるプリント類も文字が小さくなるため、能率的に学習を進めるためのスキルを身につけておくことが必要になります。
 定期考査で問題が小さ<見えにくかったり、時間がかかったりで苦労する弱視の生徒も多く、拡大コピーや試験時間の延長などの配慮も必要になります。
 進学・就職に関しても、受験のための学校探しや、就職先に苦労することも多く、受験校との事前の打ち合わせや、情報収集などが必要になります。
 
成人期の支援
《成人期》

 1996年の厚生省の調査では、視覚障害によって身体障害者手帳を取得した方々は全国で31万人です。潜在的な視覚障害者も含めると100万人ともいわれていますか、実態ははっきりしません。手帳を取得した方のうち18才未満の視覚障害は5000人で、6割以上か、65才以上の方という現状です。加齢に伴い、白内障、糖尿病性網膜症、緑内障、加齢黄斑変性などが増加してきており、それに伴って高齢の視覚障害者の割合は増加してきています。このため学齢期までの子供たちだけを対象とした相談でなく、成人の方も含めた相談・支援を行っていく必要が生まれてきています。
 成人期における視覚障害者の方々の問題の中心は、職業的自立や日常生活の不自由の改善にあります。福祉制度の活用や、生活訓練などがその前提となりますが、ちよっとした工夫で改善することも多いのです。筆記用具やテープルの色を変えてみるだけで、見え方が大きく改善することもあります。
 盲学校では、見えにくい方々に、保有する視覚を最大限に活用できるよう、補助具や生活上の工夫についてのアドバイスなどの支援を行っています。具体的には、視覚障害者用パソコンの活用、弱視レンズの紹介や貸し出し、拡大読書器の紹介・体験、見え方の改善に関する工夫などの支援を行っています。